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動画撮影~レンズによる被写界深度の違い~ 

 
前回の富塚通信ではビデオカメラと一眼レフカメラの描画力が
どれほど違うのかについて、実際の画像を交えながらご紹介しました。
 
当方では動画撮影にはオートフォーカスの性能及びパソコン上での
編集作業を考慮し、メイン機はビデオカメラを使用していることは
すでにお伝えした通りです。
 
しかし、ここ近年、映画撮影やテレビコマーシャルの撮影などで
プロが敢えて一眼レフカメラの動画機能で撮影を行うといったケースが
増えてきています。 
 
その理由の1つとして、一眼レフカメラには豊富なレンズ群が揃っている
ことが挙げられます。ビデオカメラでは基本的に使用するレンズを交換
することは出来ません。
 
しかし、一眼レフカメラであれば倍率の異なるズームレンズ、或いは
描写力にこだわった短焦点レンズが豊富にラインナップされています。
更にはマクロレンズやソフトレンズといった特殊な性能のレンズもあるので、
映像表現の幅はレンズの数だけ存在するとも言えるわけです。 
  
製作室で使用しているビデオカメラは、最短撮影距離が30cmと長く、
(ビデオカメラのズーム性能で接写撮影が必要かどうかは置いておく
として)一眼レフカメラの撮影でいうところの接写撮影は出来ません。
 
また、レンズ交換が出来ないことから、被写界深度による背景の
見せ方のバリエーションが少ないという弱点があります。
これらビデオカメラのウィークポイントを補うことが出来るという点もあり、
当方ではサブ機として一眼レフカメラを積極的に利用しています。
 
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回は一眼レフカメラのレンズ、
特に少し変わった描写が持ち味のマクロやソフトレンズの表現力の違いを
画像を交えながらお届けしたいと思います。
 
下記の写真は映像作品撮影にも使用しているカメラとその交換レンズです。
 
ペンタックス
2018-11-21-01.jpg
 
ニコン
2018-11-21-02.jpg
 
先ずNゲージのジオラマ撮影で圧倒的に使用頻度が高いのが、50mm
(ニコン40mm)と100mm(ニコン90mm)のマクロレンズです。
車両のアップなどを狙う場合、ビデオカメラの望遠機の望遠側を使用
すれば、かなりアップでの撮影は可能です。しかしビデオカメラの
ズームでは、そのバックがボケ過ぎてしまい、視覚的距離感が不自然に
なってしまいます。
 
そんな時威力を発揮するのがマクロレンズ。背景の自然な距離感の再現に
有利です。更には、蒸気機関車や電気機関車のナンバープレートの
アップ等のような撮影には、マクロレンズに接写リングを装着することで、
鉄道模型の細部を画面に大きく映し出すといった表現も可能になります。
 
また、前回映像のピントの合っている範囲を「被写界深度」といい、
大きなイメージセンサーを持っている一眼レフカメラの特長であると
いう話をしました。
 
特にジオラマ撮影の場合ですと、背景のジオラマにどれくらいピントを
合わせるかどうかで、映像の仕上がりが全く異なってきます。
 
その為、意図した映像を撮影できる被写界深度を持ったレンズが必要に
なってくるわけですが、レンズにもそれぞれ個性や特性があります。
その特性や映像の個性を活かすために、同じ焦点距離でも複数本の
レンズを用意する場合もあります。
 
下の画像は桜のジオラマをPentaxのK-1を使って、3本のソフトレンズと
マクロレンズでそれぞれ撮影比較を行った写真です。
 
使用レンズは、ソフトレンズが「SMC PENTAX FA28mm F2.8 SOFT」
「SMC PENTAX 85mm F2.2 SOFT」「PENTAX FA85mm F2.8 SOFT」

マクロレンズが「PENTAX MACRO100 WR」です。
  
焦点距離が異なるレンズもありますが、レンズの描写と被写界深度の
比較がし易いように画像はトリミングをしています。
尚、トリミング以外の色調補正等は一切行っていませんが今回はjpeg
ではなく、カメラのRAW形式で撮影を行いました。
 
2018-11-21-03.jpg
50mmの標準レンズで撮影
普通のズームレンズで撮影した画像です。 
 
2018-11-21-04.jpg
PENTAX FA28mmF2.8SOFT 開放(絞り値2.8)で撮影
 
2018-11-21-05.jpg
PENTAX FA28mmF2.8SOFT 絞り値4で撮影
ボケ方は、85mmF2.8のソフトに近い。広角レンズの特徴である最短
撮影距離の短さを活かしてアップでの撮影時に使用しているレンズです。
 
2018-11-21-06.jpg
SMC PENTAX 85mm F2.2 SOFT 開放(絞り値2.2)で撮影
 
2018-11-21-07.jpg
SMC PENTAX 85mm F2.2 SOFT 絞り値4で撮影
40年位前のレンズで、ハイライトのにじみに特徴があるレンズ。
フィルターによるソフト効果では得ることの出来ない、ソフトな
効果が大きな特徴。
 
2018-11-21-08.jpg
PENTAX FA85mm F2.8 SOFT 開放(絞り値2.8)で撮影
 
2018-11-21-09.jpg
PENTAX FA85mm F2.8 SOFT 絞り値4で撮影
先のSMC PENTAX 85mm F2.2 SOFTとは同じ焦点距離でありながら、
ボケ方が全く異なるレンズ。使用例としては、フィルターのフォギー(弱)
よりも弱い効果が欲しいケースに使用することが多い。
 
先述の通り、同じ85mmの単焦点レンズであっても、そのボケ具合や
ハロの出方には大きな違いがあります。 
また、同じレンズであっても絞り値を少し変えただけで背景のピントの
合う範囲に変化が見受けられると思います。
 
2018-11-21-10.jpg
PENTAX MACRO100 WR 開放(絞り値2.8)で撮影
接写撮影に力を発揮するマクロレンズ。今回は画像比較のため、
標準レンズと同じ画角でトリミングしてしまっているので違いが
分かり難いのですが、ジオラマ撮影では使用頻度が高いレンズです。
 
2018-11-21-11.jpg
SMC PENTAX-DA FISH-EYE 10-17mm F3.5-4.5ED 絞り値8で撮影
特殊なレンズ紹介のおまけとしてこんなレンズもあります。
フィッシュアイレンズ、魚眼レンズです。焦点距離が短く、画像の端に
向かっていくほど歪みが大きくなり遠近感が誇張されます。
レンズの特性をお伝えするためにトリミングはしていません。
使い道を選ぶレンズではありますがインパクトのある写真になります。
 
余談ながら、実はこれらのソフトレンズは製作室スタッフのメイクアップ
シール製作力アップのトレーニングにも役立っていたりもします。
 
シールデザインでは、より細かな再現及び立体感を表現するために、
複数のレイヤーを幾重にも重ねながら製作していきます。
そして、そのパーツやレイヤーの重なりには強度や幅の異なる多様な
ぼかしのテクニックを駆使してあります。
 
こうした細かなディティール表現やぼかし効果を使ったシールであるから
こそ、模型に貼った際の空気感もしっかりと表現されているのだと私達は
考えます。その為にぼかし具合の感覚を掴む目的で、スタッフ全員が
ソフトレンズを使用した撮影(勉強会)を行う機会を設けているほどです。
 
さて、今回は前回触れた一眼レフカメラのレンズによって被写界深度や
背景処理に一体どれほどの違いが表れるかをご紹介させて頂きました。
ブログ上でより違いをお判り頂けるようにソフトレンズ等の特殊な
レンズを使用していますが、このような特殊レンズを使うことによって、
動画にも視覚的な変化を与えることが出来ます。
 
動画の撮影だけでに留まらず、ジオラマを使った写真撮影でも被写界
深度やぼかしといったテクニックはとても有用だと思いますので、
一眼レフカメラをお持ちの方は一度こうした点を意識しながら撮影して
みると、また違った発見があるのではないかと思います。
 
 
 

category: ジオラマ撮影

Posted on 2018/11/21 Wed.   edit  |  tb: 0   cm: 0