長老からのダメ出し3選
昨日のブログでは、製作スタッフのシールデザインに、音楽用語を
使ってダメ出し要求を突きつける長老の話をお届けしました。
今回は実際にあった長老のダメ出し例をいくつかご紹介します。
ケース1:ドアの影を…


「24系北斗星」オハネ25
上記の画像は、「24系寝台特急北斗星」のオハネ25を
通路側から見た写真です。
そして、下の画像データはスタッフがデザインしてきた
通路壁面の部分データを拡大したものになります。

一見、模型の写真と違いがないように見えますが、長老からは
怒涛のダメ出しが出される事に。その中で特に強く指摘があった
のが、「やわらかなドアの影を入れて!」というのものでした。
そもそもドア周りの縁取りに陰影のグラデーションを施して
いますが、それだけではなくドアの表面自体にもグラデー
ションを施すように指示が。しかも“やわらかな影を”と
言って、ピアノ曲のCDを流すのでした。

その後、何度かのリテイクでOKが出たのが上の画像データです。
単純にドアの表面にグラデーションを適用してしまうと、
ドアそのものが丸まって見えてしまう危険もありますが、
そうした見え方を回避出来るレベルを「やわらかな影」という
言葉で表現したのでした。
また、階段上の1番奥にデザインしたフットライト。
本来フットライトなどはその場を照らすほどの光量しかないので、
わずかなライト光をデザインしたところ、「ここは印象を大切に
したいから、クレッシェンドを利かせたアルペジオ」でいう
ダメ出しが入り、結果、現実よりも明るいフットライト光を
デザインすることになったのでした。
ケース2:スイートに相応しい…

「24系トワイライトエクスプレス」スロネ25
写真は「24系トワイライトエクスプレス」のスロネ25
スイート個室です。ここではベッドの柄でダメ出しが!

スイートのベッドの柄は唐草模様をベースにデザイン
スロネ25のスイートのベッドでは、実際の柄を参考に
ベジェ曲線でデザインを作成しました。
しかし、このデザインを見た長老は「スイートに相応しい
曲線感がない」の一言。

更にはベッドの柄が均質では不自然という事で、
ゆがみを加えるフィルターワークを駆使して柄や
ラインを歪(ゆが)める加工を施しました。
ちなみに長老はフィルターワークを指示する際、
ギターのエフェクター表現を用いることが多く、
この時は「スイートベッド特有の歪(ひず)みを
ファズっぽく」との指示が。
後から知ったところによると、バンド界隈では
もっぱら“歪み”を「ゆがみ」ではなく、「ひずみ」と
表現するとの事でした。
ケース3:見えないような存在にも…
下の画像は最近のブログでも度々参考例の画像に
使用している「トワイライトエクスプレス」の
スロネフ25通路壁面に部分データです。

ドアテクスチャの拡大画像データ
赤丸の左側はカラー調整済み、右側はテクスチャ素材
このドア部分のデザインには、色調調整用の画像と
1番下に模様の入ったテクスチャ画像を重ねて再現
している事は前々回のブログでご紹介した通りです。
また前回のブログにて、製作室ではサラウンド環境を
活かした音響システムで、音楽を体感する事を学びの
一環としているとご紹介しました。
ちなみに、音楽を聴く際は全ての楽器の音を聞き取る
ことが出来るよう、可能な限り大きな音で音楽を聴く
ようにしています。
大きな音量で音楽を聞くと、それまで気付かなかった
小さな楽器の音の存在に気付くことが出来るからです。
長老曰く、楽曲は普通の音量では分らないような
楽器の存在や演奏に支えられている。
そして、それはデザインワークでも同じであると。
スロネフ25の個室ドアに使用しているテクスチャ素材も、
完成したシールをパッと見ただけでは、細かな柄が
入っている事に気付かないかもしれません。
しかし音楽や楽曲がそうであるように、シールデザインに
於いても、一見して分からないような細かなデザインほど
実は大切なのだと繰り返しのダメ出しが出て、このドアの
テクスチャ画像の作成には嫌になるほどのリテイクが
あったのも、今は良い思い出です。
今回は、陰影の入れ方、柄の歪み、そして細かなデザインの
重要性と、3つのケースに分けて長老からのダメ出しの一部を
ご紹介させていただきました。
category: 富塚オリジナル