改めてデッキスペースにみる、そのデザインの重要性
特急や寝台列車などに乗車する場合、乗客が必然的に通過する
ことになるのが出入台です。一般的にデッキと呼ばれるスペースで、
本ブログでもデッキと呼称していきます。
前々回掲載の富塚通信「電源車~小さな窓から見える存在感~」では、
電源車の小さな窓ガラス部分からでしか見えない発電機に対して、
いかにこだわって再現しているかご紹介しました。
そして、そんな電源車の窓ガラス部分以上に模型の車内が見えにくい
部分があります。それが特急・急行用車両に設けられているデッキ
スペースです。


乗降ドアの窓ガラスは小さいので…
しかし、鉄道ファンの間では連絡通路であるデッキ部分にも愛着を
感じられる方が意外にも多いようです。
製作室の長老が言うには、「デッキは音楽で例えるならばイントロで
あり、アウトロだ!」
曰くは、乗客が乗車時に1番はじめに目にするのがデッキスペースであり、
同時に降車する際、最後に目に留まるのがデッキスペースなのだから、
メイクアップシールでもキッチリとシール化しなければならない。
という事で、製作室でも客室スペースと等しくこだわりを持ってシール化を
行っている部分でもあります。


左:151系こだまサハ150 右:181系とき・あずさサハ180


左:485系ひばり初期型クロ481 右:485系ひばり初期型モハ484
日本初の特急型電車151系から、その後の181系、485系のデッキは、
基本的に薄いピンク色のリノリウム壁面が特徴的です。
その他にはごみ箱や消火器が設置されており、壁面には転倒防止用の
手すりと空調配電盤が。シンプルな構造ながら、国鉄時代のメカニック感が
堪らないデザインになっています。
尚、現在の鉄道車両の設計で考えられないのは、乗降ドアの前に
堂々と置かれたゴミ箱です。今では乗客の通行の邪魔になるという事で
壁面の中に埋め込まれているゴミ箱。
当時は構造的な理由と、恐らくは収納量の兼ね合いなどからゴミ箱が
独立していたのだと思いますが、シールでは付属パーツでこのゴミ箱
部分を再現できるようになっています。


左:489系白山・あさまサロ489 右:489系白山・あさまモハ489
そのゴミ箱も489系のグリーン車では、いよいよデッキ壁面空間に
埋め込まれる事に。
ちなみに普通車の方では、従来通りゴミ箱が通路前にしっかりと
居座っています。こうしたゴミ箱の在り方の変遷に注目してみる
というのも、なかなか面白いと思います。
次に寝台客車のデッキ部分をご紹介します。


左:20系オハネフ20 右:20系ナロ20


左:24系25形はやぶさオハネ25 右:14系はまなすオハ14
寝台車のデッキは車両の構造によって、場所やその広さに
違いが顕著に表れます。

581系、583系クハネ581・クハネ583
少し変わったところでは、昼夜兼用の特急形寝台電車581系と
583系電車クハネのデッキ部分などは寝台用と昼行用特急の
デッキが組み合わされたようなレイアウトをしていて興味深いです。
尚、メイクアップシールでは581系と583系の違いもシール化
してありますので、どちらの模型でも実車と同じ再現を実現
いただけます。
さて、ここからは比較的新しい電車へと話は進みます。
近年の列車ではデッキスペースに於いてもデザイン性が
重視されており、デッキに足を踏み入れた瞬間から思わず
車内空間に惹きつけられてしまう列車も増えてきました。


左:E657系ひたち・ときわモハE656 右:スーパーはくとHOT7031
上の写真は「E657系」モハE656と「スーパーはくと」のHOT7031
デッキ部分です。どちら車両も床部分は客室と同一の意匠が
使用されており、壁面には木目調のパネルが使用されています。
こうしたところからも、昨今のデッキ内装の1つの特徴は客室との
統一感にあると言えるでしょう。
続いて掲載する画像は「787系つばめ」です。


左:787系つばめクモロ787 右:787系つばめモハ786
「787系つばめ」は客室スペースも然る事ながら、デッキ
スペースも個性的且つ、主張の強いデザインとなっています。
ちなみに787系電車は1992年から製造された車両です。
1992年は国鉄がJRになって約5年後にあたりますが、
「つばめ」に限らず、90年代頃から車両のデッキスペースも
客室同様にデザイン性を持った独自の車両が登場してきました。
近年の車両のデッキ部分をシール化する場合、車両の一つひとつに
異なった壁面や床のデザインが採用されていて、シールデザインを
行う上で楽しくもあり、同時に大変な部分でもあります。
そうしたデッキスペースのシール化ですが、メイクアップシールを
お求めいただいたお客様からは、デッキ部分も再現することが
出来て良かったとの感想をいただくことも。
車両のボディを被せてしまうと、確かにあまり見えない部分では
ありますが、ぜひ車両ごとの特徴が表れるデッキスペースにも
シールを貼って、その再現をお楽しみいただければと思います。
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